でも、わざわざ海外に行く理由が私には見つかりませんでした。
英語を勉強し、慣れない外国で生活するには、気持ちを支えるための強い理由が必要だと思っていましたし、何も考えず行動に移すだけの強いきっかけもありませんでした。
ではそんな私がなぜ、台湾にいるのでしょうか。今回は私が台湾に来た理由をお話します。
きっかけは一冊の本
大学2年生の時に本屋で『台湾人生』(酒井充子著、2010年)という本を見つけました。
もともとはドキュメンタリー映画で、台湾のおじいさんおばあさんにインタビューをするという内容でした。
本によると、台湾には植民地時代に日本語で教育を受けたご老人達がいて、今も日本語を話すといいます。
本当なのかな?という疑問がわきました。本を見ても、文章なので彼らが話をしている様子が想像できません。
彼らがどんな風に日本語を使って話をしているのか、流暢なのか、カタコトなのか知りたいなと思いました。
そしていつか台湾に行ってみたいなと思って、月日が流れました。
自分の目で確かめてみることが面白かった
大学4年生で卒業を間近に控えた春休み。台湾に行って、おじいさんおばあさんに話を聞こう!と特に計画も立てずに行きました。
台湾南部の竹田駅に日本語書籍が置いてある図書館(池上一郎博士文庫)があると聞いて向かったのですが、あいにく日本語世代の方にお会いすることができず・・・。
5日間の旅であと2日しかない、でも日本語世代の方から一人も話が聞けていない。
どうしようと悩んだときに、大学の台湾人の友人にすがりました。助けてくれ、と。
そうしたら友人が自分のおばあさんと知り合いの人合計3人を紹介してくれたのです!
3人とも流暢な、きれいな日本語を話す方々でした。話してくれた話も面白くて。
父親が警察官で小さい頃は着物を着て日本人と一緒に遊んでいたという話や、空襲に遭って近くの山に逃げたという話など。
自分の知らない歴史を、その時代を生きた人から直に聞けるということが面白かったのです。
それから、仕事の長期休みの時に台湾に行って日本語世代の方を探して聞き書きを行うようになりました。
話を聞けるのは、今しかない
日本語世代の方は今80代以上の人たちです。
日本より平均寿命は短いですし、病気や認知症になったらもう話を聞くのは難しくなります。
台湾を訪れる度に思ったのが、もう時間がないということです。
彼らの歴史を直接聞くのはもう本当にこれが最後のチャンスで、今しかないのです。
でも、仕事をしているうちは、たまに長期休みで来るしかない。それだと間に合わない、けれど仕事を辞めるのもそんなに簡単ではない・・・と悶々としました。
チャンスが巡ってきた
2016年4月に仕事を辞めました。しかし、台湾に行きたいという理由から仕事を辞めたわけではありません。
自分のキャリアを考えていくうちに、その仕事をする必要性がなかったのです。これについてはまた別の機会に書きます。
そして、台湾に語学留学する人向けの奨学金があることを知り、応募してみたら合格し奨学金をもらえることになりました。
奨学金がもらえるのなら台湾に行くしかないですね。ということで2016年8月から台湾に語学留学に来ることができました。
これからのこと
日本語世代の方へのインタビューや日本統治時代の遺跡巡りを続けていきます。
日本統治時代の建物も、老朽化が進み、一部はリノベーションされて新たに観光資源になる一方で、消えつつある建物もあります。
こういう失われつつある遺産を多くの人に伝えて、歴史について考えるきっかけを作っていけたらと考えています。