『由島至島』『聽海湧』『終戰那一天』を見て、台湾籍日本兵の太平洋戦争を考える

01.台湾の歴史を知る

ここ数年、台湾は太平洋戦争をテーマとしたドキュメンタリーやドラマの当たり年だった。今回はこの中の3つの作品を紹介したい。

日本統治時代に生まれ、『日本人』として教育を受けて日本兵として戦地に赴いた人々。

彼らは加害者であると同時に、被害者だった。

どの作品もこの点を描いている。

 

では、なぜ今になって太平洋戦争を扱う作品が増えたのか。

台湾の人たちが自分たちの歴史を振り返るとき、まず直面するのが1949年から1987年まで続いた戒厳令だろう。

この38年続いた傷跡があまりにも深かった。

その1987年7月15日の戒厳令の解除から2026年までで39年。

太平洋戦争を経験した人たちの孫世代がようやく40代、50代になり、資金を集めカメラを持って映画にできるようになった。

現代から戒厳令を掘り進めて、ようやく太平洋戦争まで到達したのだ。

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『由島至島(邦題:島から島へ)』2024年廖克發監督

4時間50分という長編ドキュメンタリー。映画をかける映画館も限られるし、観客も疲れる。身体だけでなく、日本人として突きつけられる内容もハードだ。

この作品は台湾籍日本兵の東南アジアでの加害責任を問うドキュメンタリーだ。話の中には台湾人だけでなく、日本人も登場している。

マレーシア華僑出身の監督は、よくも悪くも容赦ない。台湾のような政治的に危うい立場の台湾人はやはり日本人に対してどうしても優しさを崩せない。
しかしマレーシア華人は日本への忖度はないのだ。

日本人通訳が「それを聞くのはあまりにも失礼だ。日本人として聞けない。」と監督を制止する場面が生々しかった。監督の言葉を訳す通訳の役割からは逸脱している。しかし、そうせざるをえないほど、キツいインタビューだった。加害者ということを認めかつ顔出しでのインタビューに応じたお年寄りに対して、これほどナイフを突き刺す質問はなかった。

うろ覚えなのだが、このような質問だったと思う。「加害者としてあなたはなにをしたのか」「被害者についてどう思うのか」「加害者としての責任をどう償うのか」

4時間50分という長さゆえ、始めのほうの内容は薄っすらぼんやりとしていく。
思い出そうとしても、長い上映時間の中で消えてしまう。この映画を見ること自体が、戦争の記憶が風化していくその過程を追体験しているようだった。

『由島至島(邦題:島から島へ)』2024年 4時間50分

WEBサイト

『聽海湧(邦題:波の音色)』

太平洋戦争末期、日本軍に徴兵され北ボルネオ島で連合軍捕虜の監視員となった台湾人三兄弟の運命を描く戦争ドラマ(全5話)。
台湾人軍属がどんな風に加害され、加害する側になっていくのか描かれる。

飛行場を作るために、かなり短い期間で工事を完了させるように言われるところ。注意と作業速度を上げることによって乗り切ろうとするが…。
そもそも実行不可能な計画を無理やり下っ端にやらせ、効率を無視してただ作業させる。そこに今日のブラック企業のルーツを感じた。経営陣の無能さを現場に押し付け、気力で乗り切らせようとするやり方は、今と変わっていない。

時代考証、ストーリー構成、映像の美しさの全てにおいて完成度が高いドラマ。UーNEXTで独占配信中なので、ぜひご覧いただきたい。

こやま
戦争犯罪を犯したBC級戦犯は5700名。そのうち321名は台湾・朝鮮出身で(台湾173名、朝鮮148名)、全体の5.6%を占める。

『聽海湧(邦題:波の音色)』2024年|台湾|全5話

WEBサイト

『終戰那一天(終戦の日)』2026年盧慈穎監督

終戦記念日に合わせて、2026年8月14日に公開されたドキュメンタリー作品。
1945年8月15日の玉音放送。日本統治下の台湾で皇民として育てられた台湾人たちも聞いていた。この日を境に「日本人」から「中国人」となり、運命が180度変わった。その日の記憶を、6人の台湾人にインタビューした作品。戦争の前線にいた軍属、神奈川県で軍機を作っていた少年工、戦場での看護助手など。

戦時中の空気感が、カラー化された古い白黒フィルムによって思いのほかリアルに伝わってくる。
従軍看護師になるための試験に合格すると、新聞に大々的に名前が載って大賑わい。こんな風にして従軍看護師という仕事が世間にも知られていったんだな。こういう知名度のある仕事の名前が使われ、騙されて慰安婦にさせられた人たちのことを考えた。

『終戰那一天』2026年 97分

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最後に

戒厳令が解除されて39年。
太平洋戦争の記憶にも、正面からカメラを向けられるようになった。

特に衝撃だったのは「由島至島(島から島へ)」と「聽海湧」。
ここまで日本軍の加害性に向き合った作品は日本の作品でも多くないのではないだろうか。
台湾籍日本軍の話は、台湾人だけの話ではない。日本の歴史でもある。
ぜひ多くの日本の人に見てもらいたい。

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