私はライフワークとして台湾の日本語世代の方々に聞き書きをしている。
日本統治時代の彼らの幼い頃の話や戦後の暮らし、台湾の習慣・文化などを聞いている。
こういう話を人にすると、
「おじいちゃん大好きなんだね」とか
「右なの?」
とか言われる。
う~ん、そうじゃない。
私からすると純粋な好奇心からなのだ。
小さい頃から、物語が好きだった。祖父母と同居しており、幼い頃いろいろ話を聞いたのも影響している。
狐にばかされた話や、盲目の女芸人瞽女(ごぜ)さんの話、生理をどうやって処理していたのかなどという話を聞くと、現代とは違う価値観の思想に驚く。人間のどろっとした生臭いような部分を知れる気がして面白かった。民俗学は面白い。
それは単なるかつ純粋な好奇心から
台湾の人々から昔の話を聞くのも同じで、好奇心から。
台湾だと民俗学的というよりも、ひとりひとりが生きてきた人生がものすごく濃くて、興味をそそられる。
現在80歳後半の日本語世代である彼らは、第二次世界大戦を経験し、その後国民党による暗黒時代があり、民主化の時代があり、と苦労した分、1人で一冊の本が書けるほどに波瀾万丈の人生なのだ。
さらに、台湾人といっても本省人や外省人、客家、原住民などの立場によっても全然置かれた立場が変わってきて、見えている風景が変わってくる。
同じ歴史に遭遇していても、全然違った見方をしている場合もあるのだ。そこが面白い。
祖父に聞けなかった分を取り戻す
日本語世代に話を聞いているもう一つの理由は、祖父に話を聞けなかった後悔もある。私の祖父は2人とも戦争には行っていない。まだ少年だったからだ。
だから戦争について聞く機会はあまりなかった。祖父母から戦争の話を聞いた人の話を聞くと、すごく羨ましいと思う。
また、2人とも私が歴史に興味を持つ前に亡くなってしまった。彼らに聞けなかった分、今台湾のおじいさんおばあさんに話を聞いているのだと思う。
この次の段階は、下の世代につなげていくこと
いつまでもじいちゃん達は生きていてはくれない。
だからこそ今話を聞かないといけないと思っている。
あと、次の世代につなげていかないと。じいちゃん達が私に渡してくれたバトンを、次の世代につなげていくことがこの後の段階だ。