実は最近、台湾で発売後すぐに売り切れて再版にかけられた雑誌があるんです。その雑誌の名は『薫風(くんぷう)』。
第一巻のテーマは「台湾の神社のシンボル」(原題は「象徵台灣的神社」)。
なぜ台湾なのに神社なのか?なぜ多くの人がこの雑誌を買い求めたのか?
今回は台湾で注目されている雑誌『薫風』を紹介します。
雑誌『薫風』のテーマは台湾と日本の歴史
2016年12月23日に創刊された雑誌『薫風』のテーマは台湾と日本の歴史。近いようで遠く、遠いようで近い。誰よりも身近だけれども、よく分かっていない台湾と日本。そんな日台間の知られざる歴史的ルーツを紹介しつつ、現代の日本についても取り上げています。
ページを開いてみると、きれいな写真が使われていて目で見て楽しめます。内容は中国語ですが、一部日本語で書かれている記事もあります。
台湾人の歴史への関心は高い
12月24日に台北で薫風の創刊記念イベントが催されていたので参加してきました。会場いっぱいに集まったのは30人を超える人々。学生から年配の方まで老若男女が集まっていました。いろんな年代の人が関心をもっているようです。
1895年から1945年までの50年間台湾は日本の統治下にありました。その間に台湾全土に神社が建てられ、その多くは戦後に壊されましたが、一部の神社は今も見ることができます。神社の他にも、観光スポットとして有名な総統府や国立台湾博物館など、日本時代に建てられた建物は今も残っており、台湾の人にとって日本との歴史は目に見えるとても身近な存在です。台湾人たちが自分たちの歴史を考える中で、日本時代への関心も高いのです。
創刊のきっかけ
イベントの中で雑誌の企画をした方の話がありました。
発行人の姚銘偉さん(38)は、祖父母から日本時代の話を聞いて育ちました。おじいさんの家には若い頃の学校のクラスの集合写真が大切に飾られていました。おじいさんの学校の先生は日本人でした。戦後日本へ引き揚げなければならないときに、先生は一枚しかないクラスの集合写真を大切に持って帰ったそうです。そして何年も経って台湾に渡航できるようになってから、先生は生徒一人一人に写真を届けに来たそうです。
こういう祖父母や他の人から聞いた台湾人と日本人のエピソードから、日本という国が近い存在であったそうです。しかし、近くて重要な国であるのに、知日派*の雑誌が台湾にないのはおかしいと、ないならば自分で作ろうと雑誌を作るチームを立ち上げたそうです。
知日派*・・・日本の社会・文化などに対して深い理解を持つ言動を行う外国人。日本文化を愛好する「親日」とは一般に区別される。(Wikipediaより)
まとめ
日本語世代を祖父母に持つ、台湾の若い世代が作った雑誌。彼らは祖父母から日本時代の物語を聞いていく中で、祖父母世代が感じた危機感も受け継いでいます。その危機感を現代的なツールで解決を試みようとしています。彼らのその熱意と行動に心を打たれました。
一方で、日本人は台湾に対して理解しようと彼らのように行動できているだろうかと考えさせられました。日本人にとって台湾は身近な国であるけれども、どれだけ台湾を理解しているでしょうか。今度は、自分たちの番のような気がしました。
若い世代の台湾人が作り上げている雑誌『薫風』。これから要注目です。
Information
雑誌『薫風』 発行:成蹊社
3ヶ月に一回発行 一冊 350台湾ドル
販売店舗 https://www.kunputw.com/retail
ホームページ http://www.kunputw.com/
Facebook https://www.facebook.com/KUNPUTW/