巨大なモチ新丁粄と洗い場に出会う台中東勢

02.マニアック紀行

「巨大」なものに心ひかれる。

巨大な線香、巨大な神木、巨大なお供え物の豚…。

それは「非日常」だからだ。

いつもと違う形状に、目を引かれ、驚き、興奮を覚える。なぜ巨大になったのかを考える。

 

台湾で以前感じていた面白さも日常に埋もれてしまうとあまり感動を覚えなくなる。それは年々感じていて、そんな感受性に乏しくなった自分と折り合いをつけつつ暮らしている。でもそれは仮に日本に住んでいても同じだったかもしれない。

スポンサーリンク

巨大な亀型モチの祭典

そんな時に友人のamikawaさんが元宵節(旧暦1月15日)に行われる「巨大な亀型のお餅の祭り」についてつぶやいていた。

非日常の強烈な刺激を欲していた私は、大きな亀の形をしたお餅のために台湾中部の東勢に行くことにした。

当日は台北バスターミナルでamikawaさんと落ち合い、朝8:10の台中市東勢行きのバスに乗り込んだ。着いたのは4時間後の12時だった。

東勢は客家の里

東勢は台湾中部台中市の北部にある。清朝時代は筏の造船、日本統治時代にはクスノキからとれる樟脳、戦後は林業、現在は梨などの果物の産地として栄えた町である。2026年現在は人口4万6000人ほどの町だ。

人口規模の割に飲食店が多く、人通りも多かった。

お昼の時間になり、客家料理を食べられるお店をGoogleMapで探して入ることにした。

この東勢は客家人の割合が8割を占める客家の里である。

その小さなお店はすでに団体客(家族連れ)が入っていた。多少遅くなることは覚悟していたものの、随分と待たされた。

 

私が空腹に耐えきれずまだかまだかと厨房の方をうらめしそうに見ている一方、amikawaさんは穏やかな顔でX(旧Twitter)を眺めている。Xの海の中でぷかぷかと何時間も浮かんでいられるようだ。

まあ本でも読んで落ち着きなさいと本を渡され、「海域アジアのチャイナタウン」を読む。面白い。しかし、腹は膨れない。

最終的に1時間待つこととなった。こんなに調理時間がかかるのなら最初から断ってくれ…。どうやら調理担当が一人しかいない食堂で、時間がかかったようだ。小さな店では気をつけよう。

新丁粄節の会場へ

腹が膨れたので、この旅のメインである祭りを見に会場へ向かう。

100メートルほどの道の脇に、社区ごとにブースが置かれている。観光客や出店者たちで大変にぎやかだ。

午年なので馬が多い

新丁粄とは

左が亀型、右が桃型

台湾や東南アジアの華人社会で親しまれる、亀の甲羅模様をあしらった赤いもち米の伝統菓子。

東勢ではこれを『新丁粄』と呼ぶ。特に子宝を祈願するもので、餡には花豆(べにばないんげん)を用いる。亀型は男児、桃型は女児と形が異なる。

これと似た「紅龜粿」という亀型モチがあり、そちらは閩南系の人たちでの呼び方。長寿と吉祥のシンボルとして、祭祀や祝い事で供えられる。もちもちした皮に餡には小豆やピーナッツ餡が一般的。

こやま
「新丁粄」と「紅龜粿」は違うものなんだね!

新丁粄を形どる木型

「粄(バン)」は、米粉を原料とした客家伝統の蒸し餅や麺料理の総称。

「粄(バン)」にはこんなにも種類がある

それぞれの虚ろな馬の目がいいね

写真で見ると目が痛くなるようなピンクだが、実際もパッションピンク

水餃子さえもカラフルにされてしまう

インドネシア・シンカワンの客家人で東勢に嫁ぎに来ている人たちに会えた

さあ、お目当ての巨大モチ!なんと72Kgあるそう。

 

切り分ける作業はまさに肉の解体のよう。

客家の義民祭では神様にお供えする豚の重さを競うので、同じノリでこのモチも巨大化したのかな。

40分並んでゲットしました〜!味は…薄味であんまりよくわからず。

夜の部ではサーカスの催しものもありました。一泊したからこそ見れるよさ。

ひなびた旅社に泊まる

台湾には旅社という、安宿がある。amikawaさんと宿決めをする際に、面白そうなので旅社にすることになった。

amikawaさんはひなびた旅社が好きで、旅行先で旅社があれば必ず旅社に泊まるような人だ。

設備の古さや清潔感は安い値段相応になるため、今どきのクリーンな宿に慣れた人にはややハードルが高い選択肢にはなる。

amikawaさんに「本当に旅社で大丈夫ですか!?」と心配されたけれども、今回泊まった旅社は私にとっては割と快適だった。

確かに棚の上にホコリはあったしカーペットに髪の毛がたくさん落ちていた。

それでも最低限水回りは掃除されていたし、ベッドシーツも交換されている。

お祭りの日程で混んでいるかと思いきや、ガラ空きでワンフロアがほぼ空室だったので静かに安眠できた。

洗い場を探して

翌日は近くの洗い場を見に行った。

洗い場と聞いて、なんだろうと思う人もいるだろう。

洗い場とは、屋外に設けられた洗濯や皿洗いをする公共空間である。湧き水や川の水、井戸の水を使用する。人々が洗い物をしにくるだけでなく、おしゃべりをする社交場にもなっている。

台湾各地に洗い場は存在し、現役で使われているものもある。ちなみに日本にもある。

amikawaさんは日々洗い場を探し回っている人である。洗い場に興奮するamikawaさんを観察しようと今回東勢の洗い場散策に付いて行くことにした。

見知らぬ土地の洗い場を日々探しているamikawaさん。ネット上で目的地の洗い場の場所はリサーチ済みだ。詳しい場所は分からないので、なんとなくの方向に向かって歩いていく。

道に沿って崖の下を歩いていくと、果樹園が見えた。東勢は地域の半分が丘陵となっており、傾斜地には梨やオレンジ、柿などの商品作物が植えられている。

崖の下の湿地に民家が並んでいた。こんなところに本当にあるのか?と歩き進める。

第一村人発見。どうやらこの道の奥にあるらしい。民家の脇を進んでいくと、湧き水の水路が現れた。サワガニもいた。きれいな水なのだ。

あった!今は養殖池になっていた。あまりの変わりように写真を撮るのを失念。

 

ただ、気がつくと私も一緒に洗い場を探していた。

崖下、果樹園、湧き水。

そうだ、河岸段丘だったのだ。この東勢の凸凹は近くに流れる大甲渓が作った地形。

崖の下にはそりゃ湧き水が出るよな〜!と興奮した。

河岸段丘とは河川が作り出した階段状の地形のこと。段丘の崖下には湧水が出やすいよ!
こやま
地形から洗い場を探し出すことに面白みを見出した

東勢旅の終わり

洗い場散策を終えて、お昼ご飯に昨日とは別の客家料理屋に入った。地元の人たちがご飯を食べに来ている。今度はすぐに料理が出てきた。

こうして全ての行程を終え、私は台北行きのバスに乗り込んだ。amikawaさんはここから自転車で洗い場巡りをするという。

頭の中ではこの旅で出会った巨大な新丁粄、サーカス、旅社、洗い場の光景がぐるぐるしている。バスに揺られつつまた日常に戻ってゆく。こうして東勢の旅は終わった。

(2026年2月27日と28日訪問)

amikawaさんのブログはこちら Have Another Day

 

参考資料:

「台湾台中市東勢区における寄接梨の発展と品質向上活動:技術論と社会発展の観点から」(星純子)(PDF)

 

スポンサーリンク