今年2024年の2月に香港に行ってきました。
文字は台湾と同じ繁体字だけど話し言葉は広東語、イギリス統治の影響を受けた街並み、民主化デモが消えた後の香港がどんなものか気になったのです。
今行って大丈夫なのかとは思いつつ、まだビザが不要なときに行って来ようと思い渡航を決めました。(日本国籍の人が香港に行く場合はビザなして渡航可能ですが、他の中国国内に行く場合はビザが必要です。2024年5月現在)
中華な建物とロンドンの街並みが混在する風景
風景が自分の知る”アジア”ではない!
地下鉄から地上に出てきてすぐの光景が、もう台湾とも日本とも違うんですね。
それこそロンドンが少し混ざっているような。
二階建てバス、型の古いタクシー、英語の標識、大きな立型の黒い信号機、街角の新聞スタンド、車道と歩道を分ける柵。
建物の背が高い!
地震という制約がないと強気のデザインが作れるんですね〜。
アパートの外壁もカラフルで、台湾の基本的に灰色の公寓(低層アパート)との違いを感じます。
外見よりも室内を充実させるのが中華文化だと思っていたのだけど、違うのかな。それともこれが香港スタイル?イギリスの影響なのか…?
街を走っているバスはほぼ全て2階建て
2階に乗るだけで観光客気分を存分に楽しめました。
ハリー・ポッターの2階建てからの視点はよく再現しているのだな〜と関心。
高級ショッピングセンターはいい香りもする
最新の高級ショッピングセンターに入ったら、売っているブランドは見たことのない欧米のものだけで日本ブランドはほぼなく、香港が欧米の文化圏であることに気づきます。
あと建物の中に漂うおしゃれな香り。こういう香りさえもきっとデザインされたものなのでしょう。
物価の高さがボディーブローのように効いてくる
私よりも一足先に香港旅行をした友人から、食費がめちゃくちゃ高くてきつかったという話を聞いてました。
まあ、物価が高いのはある程度しょうがないでしょう。と思っていたのだけど…。想像以上の物価高でした。
普段の3倍の食費として1日250香港ドル(1000台湾ドル)を予算にしてたのに、何も考えずに使うと軽々と超えてしまう。3食楽しむためには少なくとも1日2000台湾ドル(1万円くらい)を予算とすべきでした。
これが台湾ならこの値段くらいで食べられるのに、約4倍だよ…ということが続くとほんとうに自然となにも買えなくなってしまいました。私が台湾の安い食べ物に慣れすぎている面もありますね。笑
茶餐廳でおじちゃんとおしゃべり
香港では茶餐廳というレストランで毎日朝ご飯を食べていました。
一人で入るとほとんど相席にされます。
とある茶餐廳で相席になったのは香港人のおじちゃん。
私が食べてた麺料理について聞いてきました。
広東語だったので中国語で日本人だから広東語分からんのよと伝えます。
話しやすいおじちゃんでいろいろ教えてくれました。
基本的に3食外食。香港の物価が高いのは仕方ない。たまに深センのほうに電車に乗ってご飯を食べに行く。
共産党についても話をしてくれたけど、香港訛がきつくて聞き取れず…。ただ楽しそうに話してました。
いまは共産党について話をするのはタブーのようだと聞いていたのですが、
以前の香港ではこんなふうに政治について好きなように語ることが日常だったのだろうと思ってしまいました。
現代美術館の解説文
M+という現代美術館に行きました。
世界各地の現代アートが展示されています。
東芝のポスターが、未来感があってとてもかっこいい。未来に対しての自信を感じる。
気になった解説文の書き方
張培力『連續翻拍25次(連続25枚撮影)』
この作品は、1970年代の中国雑誌に掲載された若い農婦の宣伝写真を、張培力が25回繰り返し撮影し、5×5のグリッド状に並べたものです。写真は徐々にコントラスト、色調、鮮明さを失い、最終的には粒子が現れ、識別が困難になります。
この作品は、写真が現実をありのまま反映できないこと、さらには簡単に操作できることを示唆しています。
中国のアーティストの特集をやっていて、解説文を読んでいたのですが、どうも文章にキレがない感じ。
メディアや写真などは簡単に印象操作されてしまうことを伝えたいのでしょう。
芸術の解説文というものはそもそもはっきりとは書かないものなのかもしれません。分かりませんが。
でも考えてしまったのは、
いまの香港ではなく以前の香港だったらこのような文章になるのか?ということ。
もっとはっきりとしたメッセージを書いていたのでは?
もっとその作品の背景にある中国の政治について言及していたのでは?
この解説文の書き方に、「民主化デモが抑え込まれた後の香港が表されている」というのは考えすぎでしょうか。
香港はこれから中国の地方都市の一つになるのか?
空港に空港の計画についての展示がありました。
香港と中国の都市との結びつきを強くしていくみたい。
最近「大灣區」という言葉を中国は使っているそうです。私が乗った航空会社も大灣區エアラインでした。
「大灣區」というのは、中国が一帯一路の政策を進める中で提唱し始めた香港を含めた11のエリアのことです。
香港は今後中国の地方都市の一つとして飲み込まれてゆくのでしょうか。
中華文化かつ民主主義という絶妙なポジショニングで世界の金融センターとして栄えた香港がどうなるのか、引き続き見ていきたいです。
まとめ
香港は非常にエネルギッシュな街でした。
金融で莫大な経済力を得て繁栄した街のエネルギーを肌で感じることができたのは収穫でした。
人口が多い中華文化が背景にありでかつ民主主義陣営で、世界中から人が集まるということがどんなに価値があったことか。
香港がそのポジションを取ることが難しくなった今、台北だけでなく東京にもチャンスがあるんですよね。
帰って来てから香港デモについて考えた
2019年に起こった大規模な抗議デモ。
今日の香港は明日の台湾だというフレーズで台湾でも香港を応援する動きがありました。
が、私からするとどこか遠い国の話で。
でも香港旅行から台湾に戻って香港のことを考えると、だれもが日常を送っている普通の場所で100万人規模のデモが起こったということがいかに大きな出来事だったのかと分かったのです。
そのデモに参加した人々の中には海外に出ていった人もいるでしょう。
けれどもほとんどのひとがまだ香港で普通に生活しているはず。
あれだけの熱量を持った人たちが今はひっそりと暮らしていることが不思議な気がしてしょうがありません。
美術館の解説文の話に戻ります。
もし、本当に人々が沈黙を決めたのでではそもそもああいったテーマを扱わないのでは?
明確に言葉で伝えられなくなっても、分かる人には伝わるようにテーマとして扱った。
そこに、人々の想いがあるような気がしました。
全体的にちょっと勘繰りすぎ気味に香港を見てしまった部分は否めませんが(笑)、今回行ってみてとても良かったです。
香港旅行のおすすめ本
旅行に行く前にエッセイを読んで気持ちを高めるのが好きです。
今回はこの「転がる香港に苔は生えない」を読んで行きました。
私は3泊4日だけの滞在でしたが、この本を読むと自分が香港に住んでいろんな住民たちと出会い暮らしたような気分になります。
私は香港滞在中にも茶餐廳でこの本を読んでこの街にこんな人たちが暮らしているのかと想像してました。帰国後に読み終わったのですが、読み終えると本当に香港の旅が終わってしまった…と胸がキュッとなりました。
(2024年2月訪問)