戦争の島「金門」で対岸を間近に望み、生粋の中華民国を知る

02.台湾マニアック観光

台湾の本島から約300km離れた先にある「金門」。

1958年8月23日から21年間の間中国からの砲弾を受けた「戦争の島」というイメージでした。戦争のために掘られた地下壕、激しい戦闘のなか兵士を鼓舞するために貼られたスローガン、対岸に見える中国の街…。

ただ実際に行ってみると「美しい風景と穏やかな交通マナー、親しみやすい人々」という、最初のイメージとは別の面に感動して私はすっかり金門贔屓になって帰ってきたのです。

金門島が舞台の映画 石原裕次郎主演「金門島にかける橋」

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金門とは

人口は約14万人、面積は153 km²と八王子市よりちょっと小さいくらい。台北の松山空港から飛行機で1時間で着きます。

中国と国境を接することから軍事拠点の色が濃く、八二三砲戦を中心とした戦争遺産が多く残されていて観光スポットとなっています。

いざ島内へ

あちこちに牛が!

バイクで金門を走っていると畑によく牛が放されているのを見ました。

この牛は食肉用なのか、牛乳を飲む用なのか、はたまた農耕用なのか。

なぜか私には目線をばちばち向けてくれる牛さん。

お昼には良金牧場というところで牛肉麺をいただきました。

なんだか今日出会った牛さんには申し訳ないけども…。

店員さんがその場でお湯をかけてくれて肉の色が変わるのが見れるんですよ。

370元ほどとかなりイイお値段なんですが、その分美味しかったです。お肉は醤油と生姜のたれに付けていただきました。

右上の牛さんに矢印で「甘くてうまい」「繊維っぽい」と肉の部位の批評が書いてあるのがシュール

金門は高粱酒が有名で、その酒粕を餌にしているので美味しいお肉になるそうです。

酒を作る過程で出た、本来ならゴミになるものを使って付加価値の高いものを生み出す、これぞ資源の有効活用だなと唸りました。

小金門から望む廈門のビル群

小金門は金門からフェリーで15分ほどで行ける小さな島です。

金城の海辺からも廈門の様子は見えたのですが、小金門からの廈門はもっと大きく見えました。

ビルの様子がはっきり見えて、双眼鏡を使うと街を走る車や看板も見れます。

廈門の大きな高層ビルが立ち並ぶ近代的な様子と、大きな建物はない小さい島の金門という構図が嫌でも目に入ってきます。中国はあえて廈門にこんなにビルを建てたのかしらと思ったり。

こんなに近かったら砲弾だっていくらでも飛んでくるし、今だっていつ何が起こってもおかしくないんだなと思いました。

一方でこんなに近くにあるのに、コロナの影響もあってそう簡単には行けない場所というのに興味をそそられました。どんな街並みなのか、自分の目で見てみたい。

翟山坑道で水面の美しさと目の錯覚に酔う

金門には戦争のために多くの人々の労働で作られた坑道があちこちにあります。

その中でも最大規模なのが西南部にある「翟山坑道」。

5年の歳月をかけて作られたそうです。これだけのものを作るのにどれだけの人の労力がかかったのだろう。自然が作ったものなのかと思ってしまうほど大きく、そして神聖な雰囲気をまとう場所でした。

水面が非常に穏やかで水も透明度が高いです。

みていると水面の下は浅いはずなのに、上の岩石が反射してしたが深く見えます。

これも目の錯覚なのですが、見入ってしまう様な美しさがありました。

今回他にも海に面した坑道は行きましたが、ここは別格でした。

金城の坑道体験が人間の感覚を超越するものだった

今回の金門の旅で一番衝撃だったのがこちらの坑道体験。

砲弾を避けるために町の下に掘った全長1285mの地下道を歩くというもの。

 

特に何も知らずツアーに参加してみたら…。

初めはよくある単に地下道を歩くやつだったんです。明るい細い道をただ歩く。

でも、途中で真っ暗な場所がありまして…。

一切光が入らず、左側にある壁に手を沿わせて進むのです。

真っ暗だと、前に進んでいるつもりでも自分が向いている方向が変になっていたりどこを向いたらよいのか方向感覚がなくなります。

前に人がいるのは声で分かるけど、どのくらい前にいるのか分からないし、前が見えないから自然と歩幅も狭まる。焦りから心臓の鼓動も速くなる。壁が一瞬なくなるところがあったのですが、その時は心臓がバクバクでした。

まだ光は見えないのかというほどしばらく真っ暗の中を歩きました。

そしてぼんやりとかなり遠くに何かが見えてきた。でも現実のものには感じられなくて。

自分が聞いている音に対して、目に見える映像が違いすぎる。前にいる人たちがあんなに遠くにいるなんて。地下道の中は音が響くので、遠いところの音もすぐ近くに聞こえるんですよね。

自分の感覚が信じられなくなりました。こんなこともあるのか、と。

視界が利かない真っ暗の中での不安感、どんな変化が自分の身体に起こるのかよくわかりました。自分の感覚(聴覚)を信用できないという体験はすごかった。

これまでの人生で体験したことのない感覚を味わえました。無料ですので興味のある方はぜひ。

 

注意事項

入口は金城バスターミナルの2階です。5人集まらないと始まりません。

出口は入り口から結構遠いところに出て、そのあとは自力で戻らないと行けません。

山后民俗文化村の雑貨屋のコレクションがすごい

台湾ではなかなか見ない凝縮された骨董コレクションの空間でした。

古い切手や絵葉書、テレサテンのレコード、年代物のお酒や瓶などなど。

好きな人が集めたんだろうなという好きが滲み出ている場所でした。

山后民俗文化村はこういう閩南建築が保存されている場所です。

金門は世界各地に多くの人を送り出した華僑の故郷だそうで、この文化村も神戸で財を成した人がそのお金で親族のために建てた家だそうです。

ここから多くの人が出て行ったというのは、それほど住みにくい土地だったのだろうか…。

交通マナーに感動

金門は台湾じゃない!と思うことは何回もあったんですが、そのうちの一つがこれ。

交通マナーです!

なんと、なんと車が歩行者に道を譲ってくれたんです!

金城のバスターミナル前は金門の中でも交通量が多い場所で、だからといって信号もないのですが、こちらが道を渡ろうとすると止まってくれる車多数!もちろんそのまま行ってしまう車もあるけど。

これは感動しました(感動する沸点が低い)。

金門で久しぶりにアナログな時間に触れた

中央付近にある小島は建功嶼という金門の観光スポット。

海岸に向かって歩いていると、海の向こう側にぼや〜っと何か見えました。

マンションらしきビルとその後ろににょっこりそびえ立つふたまわりも大きい巨大ビル。
霞がかった向こう側から巨神兵がこちらに向かっているように見えました。

もう少し暗くなったら明かりが見えるのではないのかと日が沈んで暗くなるのを待ったのですが、待っても待っても暗くなりません。

砂を触って感触を楽しんだりカニの巣穴を探したりして遊んでいました。

いつもなら気がつくと外が暗くなっているのに、この日はあたりが暗くなるまでが非常に長く感じたのを覚えています。

やっと暗くなったと思ったら、いつの間にか海の向こう側に見える明かりが増えていました。でも巨神兵のように見えたビルの明かりは見えませんでした。

空を見上げると、台北では見ることのなかった星々が見えました。日常生活ではまず空を見上げることなんてしないし、明るい都市の夜では星も姿を消してしまいます。

砂をいじったり、空を見上げたり。そんな時間が久しぶりで、尊かったです。

まとめ

金門は中華民国福建省に属します。

台北のある本島は台湾省。金門と本島とは所管する部署が異なるのです。

そのような行政上のくくりだけでなく植生や土、気候や文化歴史的にも自分が知っている「台湾」とは違っていました。

空港から乗ったバスから見えた土。赤い土だったのが印象に残っています。

台北では少なくなった蒋介石の像もあちこちにありました。

日本統治時代を経てないので、伝統建築も閩南式のものが残っています(日中戦争後に日本の占領は受けている)。お年寄りを見るとつい日本語世代かなと思ってしまう癖があるのですが、ここは日本統治時代がなかったから日本語世代はいないのだとハッとしました。

金門は「台湾」という概念が使えず形容するのが難しいのですが、そんな部分に出会えたことも面白くてまだまだこの台湾と中華民国というところは飽きないなと思いました。

おまけ:2泊3日か3泊4日あれば島内の主要箇所を回れる

私は行くときに2泊3日か3泊4日で迷ったのですが、3泊4日で行ってみた感想としては車を借りて行くのであれば2泊3日もあれば主要な観光地は回れると思います。

車がなく移動手段が電動バイクかバスだとしても、2泊3日でもよいような気もします。長く滞在しても、ご飯屋さんが少ないので食べ物に困るんですよね…。

3泊4日にしたおかげでゆったりとしたスケジュールで行けたのはよかったです。

3泊4日で回ったルート(参考)

  • 1日目

14:30金門空港着→金城へバス移動→ホテル→腹ごしらえ(肉羹麵)→建功嶼という海辺まで歩く→日没観賞→金城で夕飯

  • 2日目

電動バイクを借りる→馬山観測所→山后民俗文化村→山外でバッテリー交換→良品牧場でお昼→八二三戦史館→蒋経国記念館→頂堡集落→金城地下トンネルツアーに参加→金城で夕飯

  • 3日目

金城バスターミナルから水頭碼頭までバス→フェリーで小金門へ→現地バッテリーカーツアーに参加(要予約だけど空きがあったら当日申し込み可)→お昼は小金門で→宿に戻り一休み→金城で夕飯

  • 4日目

金城の朝市見学→朝食→バスで珠山集落へ→歩いて翟山坑道→レンタル自転車で珠山集落→タクシーで金城へ→お昼ご飯(2度目の肉羹麵)→バスで空港へ

こやま
金門空港の観光案内所で観光のパンフレットを入手するとよい

島内の交通手段

免許がある人はレンタカーやレンタルバイク、免許がない人は電動自転車を借りるかタクシーのチャーターをおすすめします。

バスはあまりおすすめしません。

何人かのブログを見て金門のバスは期待するなと書いてあったんですが、本当でした。

バスターミナルや空港から出発するのは良いのですが、それ以外のバス停になると本当に来るのか怪しいです。時刻表もないですし。私の場合珠山集落でバスを待っていて、グーグルマップ表示だと来ると表記されていたのに来ず、地図上ではいつの間にかバスが通り過ぎていたことがありました(システムエラー?)。

私は今回はバイク免許がなくても乗れる電動自転車(時速25kmまでしか出ないほぼバイク)をレンタルして金門を一周しました。

旅で気をつけたいところ

  • 食べ物屋が多くないので期待するな

フライドチキンの店は多いのに、普通の食堂が少ない印象がありました。

  • 風が強いので防寒対策を!

今回2月の頭に行きましたが、前半は風もなく暖かな日で観光しやすかったです。昼と夜で寒暖差が大きいのです。ただ後半は風が出てきて、バイクだと寒いなという天気でした。

おまけ:宿泊地は交通が便利な「金城エリア」がおすすめ

バイクや車の運転をしない旅を計画してたり、一人旅で行くなら交通の便利な場所に泊まるのがおすすめです。

金門は思った以上に交通不便でした。笑

金城エリアが金門で1番の繁華街でバスターミナルもあり、食べ物屋さんもそこそこあるのでよかったです。

今回の宿泊先「La Place」

館内もリノベーションされていて設備は新しいし、きれいに掃除がされていて清潔感もありました。スタッフの方も人当たりがよかったです。

バスタオルと洗顔用タオルは言えば1日1枚分くれます。暖房もついていて夜でも安心できました。

朝食は初めの一日目だけありました(トーストとか簡単なもの)。他に団体客があってそこに頼まれたから朝食を用意しただけで普段はしてないそうです。

La Place

住所:金門縣金城鎮民生路6號

金城のおすすめのレンタルバイク屋さん「新研租車」

ホテルから近くだったこちらのレンタルバイク屋さん。女性スタッフのかたがとても丁寧で安心感がありました。

出発後、バッテリー交換したいのに交換場所に人がいないというトラブルがあったのですがその時に電話をしたらこのスタッフさんに繋がって、すぐに対応してくれました。

言葉が不安だったらLINEでも対応してくれるので、お店で公式LINEを登録しておくと良いと思います。電動自転車のバッテリーのもちは金門一周する場合、最低1回は交換する必要があるくらいでした。

バッテリー交換場所を手作りで貼ってある地図をくれました。地図の精度はやや粗かったですが…。大体の方向性はOK!この地図で大体の方向を決め、Google MAPで細かいルートを見るという方法で進みました。

新研租車

住所:金城鎮民生路19號

金城でのおすすめのご飯やさん

金城の商店街が並んでいるエリアにあった最近オープンしたばかりのお店。

肉羹麵が美味しかったんです!台湾で食べたどの肉羹麵よりも美味しかったです。特に魚のがおすすめ。甘めの衣と魚のうまみがよく合っていた。65元と値段も安い!湯青菜(ゆでた菜葉)もGood。上にかかっていた滷肉飯の肉が美味しかったので、ここは滷肉飯も美味しいんだと思います。

麵食館

地図は大体の場所

 

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